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進学ことはじめ

マネー&ライフ編(14)2025年から3人以上子どもがいる場合は大学が無償に!? 条件や手続き方法をチェック

2025/03/26
マネー&ライフ編(14)2025年から3人以上子どもがいる場合は大学が無償に!? 条件や手続き方法をチェック

学習・進学意欲のある学生が高等教育を受けられるよう、国が経済的なサポートを行う「高等教育の修学支援新制度」。2020年から実施されており、2025年度からは支援範囲が拡充されます。今回はその内容について、詳しく紹介します。


●大学無償化(高等教育の修学支援新制度)とは

2025年度から、子どもを3人以上同時に扶養している多子世帯において、所得制限なく、国が定める一定の額まで、大学等の授業料・入学金が無償となります。大学だけでなく、短大・高等専門学校(4・5年生)・専門学校が対象です。

例えば、子どもが3人いて、第1子が大学生、第2子と第3子が高校生以下である場合、その世帯の所得額に関わりなく、第1子の授業料は最大70万円分、入学金は最大26万円分まで無償となります。第1子と第2子が大学生で、第3子が高校生以下である場合は、大学生である2人の授業料・入学金が対象となります。

この制度により「同時に多くの子どもを扶養するために、家計の負担が重くなる時期」の教育費負担が軽減されることとなります。ただし、例えば第1子が大学を卒業・就職して扶養から外れ、第2子と第3子のみ(2人)を扶養している状況になった場合、この支援は終了します。

これまで、子育てや教育にお金がかかりすぎるために、理想の人数の子どもを持つことや、多子世帯において高等教育を受けさせることなどを断念するケースが多いという課題がありました。特に子どもを3人以上持ちたいと考える夫婦に、この傾向が顕著に見られていました。

そこで、多子世帯であっても、経済状況にかかわらず、子どもを大学等に進学させることができたり、理想の人数の子どもを持てたりする社会となるよう、多子世帯の学生等に対して大学等の授業料・入学金を一定額まで無償とする措置が講じられることになったのです。

この措置は、2023年12月に閣議決定された「こども未来戦略」に基づいて実施されます。


●利用するための条件は?

今回の改正に際して、制度を利用するために必要な条件を紹介します。

・子どもが3人以上同時に扶養されている家庭である

3人以上の子を扶養中の世帯において、大学等の学生の授業料・入学金が一定額まで無償となります。
もし、子どもが2人以下の世帯や、子どもが3人以上いても長子が既に就職しているなどの理由により扶養対象が2人以下である世帯の場合、世帯年収600万円程度(目安)であれば、これまでと同様に、世帯年収に応じた支援制度を利用できます。
なお、大学院生は現行制度と同様に制度の対象にはなりませんが、扶養する子どもの数に含むことが可能です。ただし、一定の収入を超えた場合は扶養から外れるため「扶養する子ども」としてカウントできなくなります。
また、制度の対象となる学生がアルバイトをすることは可能です。こちらも一定の収入を超えた場合、上記と同様となりますので、注意しましょう。

・世帯年収等の要件はない

今回新設される多子世帯への支援制度については、3人以上の子どもを扶養中であれば、世帯年収による制限はありません。

・学ぶ意欲がある学生である

新制度による支援を受け続けるには、大学等への進学後、学習意欲や学習成果について一定の要件を満たすことが必要です。該当する要件については後述します。


●学校種によって支援金額が異なる

対象となる進学先は、全国の大学、短期大学、高等専門学校(45年生)、専門学校のうち、一定の要件を満たすものです。具体的にどの学校が該当するかについては、文部科学省ホームページから確認できます。対象校以外に進学する場合は利用できないため、注意しましょう。

 支援の対象になった場合、現行制度と同じく、大学などに納める授業料と入学金から以下の表に示された金額を上限としてそれぞれ免除・減額されます。


例えば2023年度入学者の私立大学の入学金、授業料の標準額はそれぞれ240,806円、959,205円ですから、減免されることによって大幅な負担軽減になるといえるでしょう。
なお、支援は学生本人に減免分の現金が支給されるわけではなく、各学校の授業料等が減額されます。
出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」


●手続きの方法

多子世帯であれば自動的に無償化となるわけではありません。支援を受けたい場合は、定められた申請手続きを行うことが必要です。申請には「在学採用」と「予約採用」の2つの方法があります。

2025年度に大学等への入学を予定している方は、入学後、その学校を通じて日本学生支援機構(JASSO)に申し込む「在学採用」を利用してください。

また、2026年度以降の制度利用を検討している方は、「予約採用」の申請をする必要があります。進学予定の前年4月下旬頃から、在籍する高等学校等を通じて申し込んでください。


●支援を打ち切られる場合もあるので注意

この支援制度は「学習意欲がある」学生を対象としています。支援を継続して受けるためには、学修意欲と学修成果を測る一定の要件を満たす必要があります。その要件とは、出席率、学年ごとの修得単位数、GPA(成績評価)など。基準を満たさない場合には支援が打ち切りとなります。要件には「警告」「停止」「廃止」の段階があります。

◇「警告」の基準

支援は継続されますが、学修意欲や学修効果の向上が求められます。
・出席率が8割以下(半期15回の授業のうち欠席が3回以上)である
・修得単位数が7割以下(卒業に必要な単位数が124単位の場合:1年生で21単位以下、2年生で43単位以下、3年生で65単位以下、4年生で86単位以下)である
GPA(成績評価)が、所属する学部等の下位4分の1である

◇「停止」の基準

2回連続で「警告」となった場合のうち、2回目の「警告」が「GPA等が学部等における下位4分の範囲に属すること」のみであれば支援が停止されます。
なお、次回の学業成績の判定の際、「廃止」「警告」に該当しなければ支援は再開されます。

◇「廃止」の基準

下記の状況となると、支援が打ち切られてしまいます。
・出席率が6割以下(半期15回の授業のうち欠席が6回以上)である
・修得単位数が6割以下(卒業に必要な単位数が124単位の場合:1年生で18単位以下、2年生で37単位以下、3年生で55単位以下、4年生で74単位以下)である

出典:文部科学省「令和7年度から、子供3人以上の世帯への大学等の授業料等の無償化を拡充します!(「高等教育の修学支援新制度」の拡充)」


●まとめ

世帯所得額に関係なく、大学の入学金・授業料が一定額まで無償になれば、全国の多子世帯の教育費負担は大きく減りますね。3人以上の世帯で、進学に関して経済的に心配な方は、下記サイトなどで事前に詳細を調べ、制度を活用してみてください。

※当コラムは20253月時点の情報を載せています。今後制度内容が変更となる可能性もありますので、最新情報を確認してください。

参考サイト:文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
                      日本学生支援機構「申込に関する手続」