進学準備編(11)一般入試だけじゃない! 大学・短期大学受験の選抜方法
大学・短期大学に進学するための選抜方法は基礎学力を測る「一般入試」だけではありません。他に「推薦入試」や「AO入試」など多様な方法があります。これらの違いを知って、合格のチャンスを増やしましょう!(この情報は2019年4月時点のものです)
●どんな選抜方法があるの?
大学・短期大学への主な選抜方法には一般入試、推薦入試、AO入試があります。各学校が個別に実施する学力試験の「一般入試」が主流ですが、近年では「推薦入試」や「AO入試」の枠を増やしたり、新たに設けたりする学校が増えています。
平成29年度は上図グラフの通り、推薦入試・AO入試の合格者割合が、私立大学で過半数、公私立短期大学では約8割と、多くを占めています。
一方、国公立大学ではその割合が2割弱ですが、国立大学協会では「2021年度までに国立大学全体としてAO入試・推薦入試等の占める割合を、入学定員の30%とすることを目標にする」と公表しており、今後割合は増えると予想されます。
背景として、「日本では社会の変化の速度と複雑さが増すこの時代、教育力を高め、高い能力を持つ人材の育成が課題になってくる」ということが挙げられます。
国立大学協会では「先行き不透明な時代を生き抜くためには、知識・技能のみならず、自ら問題を発見し答えを生み出し新たな価値を創造する力、多様な人々と協力しながら主体性を持って人生を切り拓いていく力が必須となる」と示しています。
このように、これからの社会に対応できる人材育成のため、国の教育システム全体を抜本的に転換すべく、大学をはじめとした高等教育機関において、学力以外の総合的な人物評価で学生を獲得する流れとなっています。
●「推薦入試」・「AO入試」って何?
【推薦入試】
推薦入試には、大きく分けて「公募制(公募推薦)」と「指定校制(指定校推薦)」があります。
<公募制>
【特徴】大学側の出願条件を満たし、なおかつ高等学校長からの推薦がもらえれば、誰でも出願できる入試制度。
【出願条件】高1~高3の1学期の学習成績に基づく、評定平均値に基準が設けられることが多い。また国公立大学においては、センター試験の受験が課される場合がある。
<指定校制>
【特徴】大学側から指定を受けた高校の生徒だけが出願可。主に私立大学で行われている。高校ごとに推薦枠が決まっているため、学業成績や部活動、課外活動への取り組み実績などをもとに校内選抜が行われ、出願者が決まる。
【メリット】選抜者に選ばれると、合格率はほぼ100%。選抜されるためには、定期テストでは高得点を獲得し、部活動や課外活動などにもしっかりと取り組んでおくことが大切。
【デメリット】専願での受験が前提となっているため、合格した場合、その学校以外を受験することができない。
【AO入試】
【特徴】「AO」とはアドミッションズ・オフィスの略称。学力試験を課さず、人物を評価する入試制度。アメリカで一般的な制度で、日本では慶應義塾大学が1990年に初めて導入した。
【審査方法】高校における成績や面接・小論文などを通して、明確な目標や意志、学習意欲があるかを審査する。そして、その受験生が大学・学部の定めているどのような学生像を求めるかをまとめた「アドミッション・ポリシー」を満たしているか否かで、合否判断をする。
出願受付はAO入試の場合、8月からスタートするのが一般的です。
ただしAO 入試を受けるための「エントリー受付」は、早いところでは高3の春から行われます。中には受験資格としてオープンキャンパスへの参加を定めている学校もあり、オープンキャンパスの開催時期に合わせて、エントリー受付を開始する場合があります。合格発表は8月末~年明けにかけて行われ、AO入試の方が推薦入試よりも選考期間が長いのが特徴です。
推薦入試は10~11月にかけて出願し、10~12月に選考、年内~センター試験後までに合格発表となる流れが多いです。
●推薦入試・AO入試は楽ではないが、うまく利用しよう!
一般入試に比べて合格発表が早い推薦入試・AO入試ですが、「早く合格したい」という一心で受験を検討することや、勉強をせず、ラクに合格できる方法と考えるのは大きな間違いです。学力試験と違って対策が難しいことや、推薦入試・AO入試で入学した学生の基礎学力不足を指摘する声が多いため、合格しても入学後の授業についていくための勉強が必要です。
そうしたことから、文部科学省が全国の国公私立大学に対し、令和2年度(2020年度)から推薦入試・AO入試でも学力試験を義務付ける方針を固めました。
推薦入試やAO入試を受ける予定でも、当日体調不良で失敗するなど、万が一の場合を想定し、一般入試やセンター試験にも臨むつもりで、受験勉強を怠らないことが大切です。
これらの特性をしっかりと把握し、多様化する選抜方法をうまく利用して、志望校合格のチャンスを増やしましょう。
出典:文部科学省「平成29年度国公私立大学入学者選抜実施状況」、「平成29年度公私立短期大学入学者選抜実施状況」、「2020年度以降の国立大学の入学者選抜制度-国立大学協会の基本方針-」
一般社団法人 国立大学協会「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」工程表